前回のブログと関連して、公職選挙法について。
前回のブログでは、公職選挙法の現行法令について、調査資料(主に総務省資料と総務省見解)をご紹介しました。
さらに関連して、各国の選挙制度について、国会図書館へ浜田聡事務所より調査依頼を行い、回答が来ましたのでご紹介します。
【依頼内容】
各国の公職選挙の法制度について
OECD 各国における(可能な範囲で)下記について比較表の作成
①立候補の条件(例えばアメリカでは、推薦人や選挙地域内での小口現金の規定の詳
細、供託金があれば金額の比較)
②選挙に係る規制内容(インターネット、アプリ等のオンライン上の規制)
③②以外の規制内容(文書図画等)
∟電子書籍がネット上のものと位置づけられるのか、書籍と定義されているかももし
あれば知りたい。
④いわゆる公営制度があるかないか、ある場合はその内容
【回答】
▼資料一覧
【1-1】藤原佑記「選挙供託制度」『レファレンス』851 号, 2021.11, pp.143-163.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11884866/1/1
⇒特に「別表 4 諸外国・地域の選挙供託制度の概要」(pp.158-163)
【1-2】Piret Ehin et. al., Independent Candidates in National and European Elections (Study),Directorate-General for Internal Policies, Policy Department C: Citizens’Rights and Constitutional Affairs, European Parliament, 2013, pp.22-24. European Parliament Website
https://www.europarl.europa.eu/thinktank/en/document/IPOL-AFCO_ET(2013)493008
⇒ “Table1 - Rules regarding independent candidates: general elections”(p.22)
“Table2 - Rules regarding independent candidates: national upper house”(p.24)
【1-3】“Ballot access for presidential candidates,” Ballotpedia Website
https://ballotpedia.org/Ballot_access_for_presidential_candidates
⇒ 表 “Petition signature requirements for independent presidential candidates, 2016”
があります。
【1-4】木村志穂「米英独仏の政治資金制度」『調査と情報―ISSUE BRIEF―』878 号,
2015.9.29.
https://doi.org/10.11501/9498994
【2-1】「教えて各国選挙事情」『毎日新聞』2017.10.13.
【2-2】「主要国(G7 及び韓国)の国会議員選挙における主な選挙運動規制」令和 4 年
10 月 28 日
(注)アメリカは、各州によって選挙運動規制の内容が異なる。特に断り書きがない限り、表ではウィスコンシン州の例を挙げた。
(出典)
(日本)公職選挙法
(アメリカ))”2021 Wisconsin Statutes & Annotations Chapter 12 - Prohibited election practices.” JUSTIA US Law website <https://law.justia.com/codes/wisconsin/2021/chapter-12/>
(イギリス)Representaiton of the People Act 1983. ”9 Publicity”;”10 Public Meetings”, Parker’s Law and Conduct of Elections, LexisNexis..
(ドイツ)Bundeswahlgesetz. Strafgesetzbuch
(フランス)Code électoral, Le guide pratique des élections; ed : 2022; Montrouge : Editions Législatives, 奥村公輔「フランスの国民投票運動におけるインターネット利用の規制」『レファレンス』852 号, 2021.12, pp.29-47.
(イタリア)LEGGE 4 aprile 1956, n. 212. LEGGE 1 aprile 1981, n.121. LEGGE 25 marzo 1993, n.81. LEGGE 10 dicembre 1993, n. 515. LEGGE 22 febbraio 2000, n. 28. 大林啓吾・白水隆『世界の選挙制度』三省堂, 2018.
(カナダ)Canaca Elections Act 2000, Election Canada website <https://www.elections.ca/home.aspx>
(韓国)公職選挙法、河合洸生「韓国における選挙運動について~インターネット選挙運動を中心に~」『Clair Report』No.467, June14, 2018.<http://www.clair.or.kr/information/clair_report.asp>
【3】「諸外国における選挙供託金・選挙公営等について」平成 30 年 7 月 6 日
※原則として下院議員選挙(韓国は一院制)についての規定を記載した。選挙制度は、アメリカとイギリスが単純小選挙区制であり、選挙区ごとに比較多数の票を得た候補者が当選人となる(ただしアメリカの一部では小選挙区 2 回投票制が採用されている。)。ドイツは小選挙区比例代表併用制であり、全体の議席を原則として比例代表制で政党に配分しつつ、単純小選挙区制の選挙により総定数の一部の小選挙区当選人を定める。フランスは小選挙区 2回投票制であり、選挙区ごとに、第 1 回投票で、有効投票の過半数かつ有権者数の 4 分の 1 以上の票を得た候補者がいる場合には、その候補者を当選人とする。該当する候補者がいない場合には、有権者数の 12.5%以上の得票者(該当者が 2 人未満の時は、上位 2 人)が 1 週間後の第 2 回投票に進出し、比較多数の票を得た候補者が当選人となる。韓国は小選挙区比例代表並立制であり、小選挙区選挙と比例代表選挙の結果をそれぞれ集計して全体の選挙結果とする。
※円換算は、2018(平成 30)年 7 月分報告省令レートに基づき、1 ポンド=149 円、1 ユーロ=130 円、100 ウォン=10 円として行った。また、適宜四捨五入を行った。
(出典)
・各国の選挙法等; 木村志穂「米英独仏の政治資金制度」『調査と情報―ISSUEBRIEF―』878 号, 2015.9.29; 佐藤令「主要国における政治資金の使途制限―個人的支出の制限を中心に―」『調査と情報―ISSUE BRIEF―』991号, 2018.1.18; Parker’s Law and Conduct of Elections, LexisNexis; Ofcom, “Ofcom rules on Party Political and Referendum Broadcasts,” 2017.3.22. <https://www.ofcom.org.uk/__data/assets/pdf_file/0035/99188/pprb-rules-march2017.pdf>; イギリス選挙委員会ウェブサイト <https://www.electoralcommission.org.uk/>; Christina Holtz-Bacha, “A Serious Matter: Political Advertising in Germany,” Christina Holtz-Bacha and Marion R. Just eds.,Routledge Handbook of Political Advertising, New York: Routledge, 2017, pp.340-352.
一覧表が少し読みづらいかもしれません、、
ざっくりと資料の記載内容についてまとめると、
▼供託金及び公営制度について
✓日本の供託金は他国と比較して結構高い
✓日本の選挙における公営制度は他国と比較してかなり充実している
▼選挙運動規制について
✓選挙期間について、日本のような事前運動という概念が無い国もある等、どこも日本より幅広く認められている
✓演説会について、日本が最も規制が細かい
✓文書頒布、掲示について、日本が最も規制が細かい
✓マニフェストについて、規制のない国が多い
✓テレビ、ラジオ、新聞などの利用について、韓国が最も細かく規制があるが、規制のない国もある
✓インターネットの利用について、規制のない国が多い
✓戸別訪問について、日本だけが一切禁止となっている 等
⇒他国と比較すると日本の選挙運動規制は厳しいように感じます。特に、選挙運動が認められている期間が日本は非常に短いと感じます。
前回のブログでも書きましたが、抜け穴の多い規制は無い方が良いのではないかと思います。そもそも選挙運動の規制が厳しい、または規制を強化することは良い事なのでしょうか。
本当に必要な規制かどうか、ポスター掲示場の撤廃も含め抜本的な見直しに向けた議論が進むことを望みます。