齋藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要 (METI/経済産業省)
▼経済産業省/Rapidus社への追加支援の決定
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/post5g/pdf/240402_theme_01.pdf
政府のラピダス社への支援については、批判的な意見も見られます。
▼一部抜粋
政府がラピダス支援を念頭に、複数年にわたる「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を打ち出した背景には、政府の支援が直ぐに打ち切られるリスクを恐れて、民間の投資などが控えられる可能性があるとの考えがあり、先行きの予見可能性を高める目的で複数年の枠組みにしたと政府は説明している。
確かに、政府が一定期間、しっかりと支援を約束するもとで、民間は安心してラピダスへの融資や出資、関連する投資などを出すことができるだろう。しかしそうした安心感は、モラルハザードのリスクを高めることにもなるはずだ。
公的支援によって、ラピダスが、自らの力で成功を勝ち取るとの意欲が低下すれば、それは事業の失敗のリスクを高めてしまうのではないか。また、銀行や関係する企業からの監視の目も緩んでしまうだろう。
過去の国主導での半導体復活の試み、いわゆる日の丸半導体構想はうまくいかなかった。1999年に、NECや日立製作所などの半導体部門が合流し「エルピーダメモリ」が生まれた。同社は、公的資金活用による300億円の出資を受けたが、2012年に経営破綻している。失敗の理由の一つに、民間企業の集合体であったため、いわゆる「船頭多くして船山に上る」の例えのように、迅速な意思決定ができない一方、責任の所在があいまいになってしまった面があった、との指摘がある。
また、政府が関与することで、事業成功に向けた民間企業の責任意識が損なわれてしまったモラルハザードの側面もあったのかもしれない。こうした経験が今回の公的支援では十分に生かされたのだろうか。
ラピダス社への支援についてそもそも成果指標があるのか、浜田聡事務所より経済産業省へ質問しました。回答と併せてご紹介します。
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聞きたかった回答が得られなかったので、追加質問しました。回答と併せてご紹介します。
①未来の支援計画も併せて全体像として設計、検討されているものがあると思いますが、その詳細を教えてください。
→開発後の量産に対する支援の現段階の見込、検討中の者も含めて全て教えて頂けますか。支援金の算出根拠があれば教えて頂きたいです。
<答>
⚫ まず、現在取り組んでいる 2nm 世代の先端ロジック半導体に対する研究開発支援は2027年度までの5年間、チップレットパッケージ実装技術に対する研究開発支援は2028年度までの4年間を予定しています。
⚫ その進め方として、通常の他テーマでは中間時点の2.5年を目処に 1 度だけ実施するステージゲート審査委員会を、ラピダス社に対しては毎年度実施し、進捗状況、翌年度の計画等を外部有識者に確認いただきながら進めています。
⚫ 加えて、今後の量産開始に向けては、ラピダス社はしかるべきタイミングで民間からも資金調達を行い、資本の充実を図っていくこととなると承知しており、経済産業省としても必要な出融資の活用拡大、支援手法の多様化等の検討に加え、法制上の措置の検討を開始しており、必要な法案を早期に国会に提出することを目指しているところです。
②① について、それぞれ支援の判断基準となる指標(いつまでに何の指標が達成されていれば支援の決定となりますか。指標以外の判断基準もあれば詳細を教えてくだい。)
<答>
⚫ まず、採択審査での判断基準としては、先の問3で回答いたしました研究開発計画上の開発目標に対する達成実現見込みや政策的・技術的な観点から研究開発計画との合致性を外部有識者に判断いただいています。
⚫ 続いて、毎年度のステージゲート審査での判断基準としては、開発目標(=最終目標)を基にした中間目標、年度目標を採択後契約締結時に設定しており、この年度目標の達成状況や翌年度計画の妥当性などから外部有識者に判断をいただいています。
⚫ また、量産開始に向けた支援については、その要件等を含め、必要な法案の提出に向けて検討を進めているところです。
③これまでの支援の決定となった根拠をお示しください。
<答>
⚫ 上記問②で回答させていただきました判断基準に基づき、外部有識者の方に判断をいただいており、2023年度のステージゲート審査では通過目安を大きく上回る点数となっています。
⚫ その根拠となる具体的な進捗状況等の内容につきましては、公表することでラピダス社の競争上の地位、利益を害するおそれがあるとともに、日米欧の連携によって進める最先端半導体の開発情報であり安全保障上の懸念も生ずるおそれがあると考えており、ご回答は差し控えさせていただきたく存じます。
④初めの問2について、具体的な算出根拠となる計算式を教えてください。ラピダス社からの提供資料、数値やその他の調査資料のどこをピックアップして支援金の妥当値をどのように判断されましたか。
<答>
⚫ 金額の算定においては、計算式ではなく、事業内容に照らして取得が必要と思われる設備等について、他テーマでの類似購買実績や企業から参考として提供いただく見積もり、有識者へのヒアリングなどから積み上げを行っています。
⚫ その妥当性については、予算要求における財政当局による査定を経た上で、ステージゲート審査委員会における外部有識者により、翌年度計画と照らして適切な予算となっているか判断をいただくことで、担保しています。
⑤開発目標が順調に達成されているかどうか、進捗確認のための指標(KPIの様のものを想定)はありますか。あれば詳細を教えて下さい。
<答>
⚫ 問②の回答と一部重複いたしますが、研究開発計画で掲げている開発目標は5年間の事業終了時点の最終目標となり、ラピダス社との採択後契約締結時点においてはより詳細な中間目標、年度目標を設定しています。さらに、ポスト5G基金事業の執行団体であるNEDOにおいて、これらの目標を月次に落とし込んだKPIを設定し、月次の進捗確認を行っています。
⚫ これらの目標・KPIにつきましては、公表することでラピダス社の競争上の地位、利益を害するおそれがあるとともに、日米欧の連携によって進める最先端半導体の開発情報であり安全保障上の懸念も生ずるおそれがあると考えており、ご回答は差し控えさせていただきたく存じます。
⑥同業他社等、開発目標の数値を設定する際に参考にした資料があれば頂きたいです。
<答>
⚫ 「ビットセル面積:0.0187μm2以下」につきましては、半導体の国際的なロードマップであるIRDS(International Roadmap for Devices and Systems)2022 MORE MOOREを参照しています。
⚫ 「アレイ記憶容量:128Mbit以上」につきましては、2020年にTSMCが5nm世代で135Mbitでの実証、2022年にIntelが4nm 世代で57Mbit での実証を行っている国際学会での発表があり、これらを参考に設定しています。
⚫ どちらの目標も、その妥当性について、有識者への確認も行っています。
⑦開発目標の数値は達成必須要件でしょうか。未達成となった場合に支援金返還等の
条件は課されているのか、どのような対応を取る事になるのか教えて頂けますか。
<答>
⚫ NEDOの他事業と同様、事業終了後の競争優位性を確保すること等を目的に最終目標を定めており、そこに向けて必要な中間的なKPI等を定めています。
⚫ 一方、研究開発については、一般的に、その性質上、想定どおりの成果が出ないリスクがあり、民間企業のみでは取組が進まない可能性があるため、公的支援を行う必要性があります。こうした研究開発の性質及び公的支援の必要性に鑑みると、目標が未達成となった場合に支援金額の返還等のペナルティを設けることは、研究開発を促進する効果を阻害することとなるため、適切ではないと認識しています。
⚫ したがって、NEDOの他事業と同様、本事業においても、支援金額の返還等は求めていません。
⚫ 一方で、最終目標の達成に向けて、毎年度、外部有識者による技術推進委員会やステージゲート審査委員会による見直し、NEDOによる月次の進捗確認等を行い、その取組状況や競合環境の変化等をフォローし、仮に進捗に遅れがある場合には補正策等を検討しています。
⚫ なお、ポスト5G基金事業においては、基金全体のKPIとして、テーマごとに設定した最終目標の達成率が 80%以上という高い目標を掲げ、日々マネジメントに取り組んでおり、現時点で事業期間が終了したテーマでは 80%を超える達成率となっています。
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ここまでの回答をざっくりまとめると「外部有識者に全て任せており、詳細の進捗は教えられない。KPIや目標は設定しているが、未達成だったからと言って支援金額の返還は求めない。」という感じでしょうか、、、。
この回答だけではラピダスの支援が妥当かどうか判断できないので、更に追加質問させて頂きました。
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①未来の支援計画(先端ロジック半導体に対する2027年度までの5年間、及びチップレットパッケージ実装技術の2028年度までの4年間)それぞれの想定支援金総額が知りたいです。
<答>
⚫ 先端ロジック半導体、チップレットパッケージ実装技術ともに、今後の支援総額に関しては、額ありきではなく、外部有識者による事業の進捗状況に関する確認や国際的な技術動向や市場動向等も踏まえながら、年度ごとに検討することとしており、現時点で総額の想定はございません。
⚫ 引き続き、外部有識者による事業進捗の管理を適切に行うとともに、追加の予算措置を講じる場合には国会でご審議をいただく中で、その必要性を丁寧に説明することで、国民の皆様にもご理解いただけるように努めてまいりたいと思います。
②一番初めに頂いた開発目標の成果指標は先端ロジック半導体に対する指標だと思いますが、チップレットパッケージ実装技術の成果指標は決まっていますか。検討中のものでも良いので、状況と決定した指標または検討中の指標を教えてください。
<答>
⚫ チップレットパッケージ実装技術の成果指標につきましては、以下の四角枠のとおりです。なお、公募実施時に、経済産業省が定める研究開発計画に記載しております。
⚫ 指標の設定においては、前工程と同様に有識者のご意見も踏まえながら、競合企業やベンチマーク情報に基づき設定しています。
③②について、開発目標(成果指標)の数値を達成することで、日本の半導体市場及び世界の半導体市場へどのような影響があるのか、試算等はありますでしょうか。またその市場への影響にもとづき、日本経済への想定波及効果はどの程度あると思われていますか。振り幅が大きいものと思われますが、想定されている内容を教えてください。
(日本及び世界における現在の半導体市場の状況及び今後の想定状況、支援を行ったことでその想定がどのように変化する見込みなのかを教えてください。)
<答>
⚫ ご質問にストレートでお答えできる試算は持ち合わせておりませんが、半導体の世界需要は2030年に約150兆円になるといわれており、そのうち、ロジック半導体が60兆円と言われています。
⚫ 当課としては、ラピダスに対する支援等により国内で半導体を生産する企業の売上高を2030年に15兆円、特に先端ロジック半導体については 1.5 兆円とすることを目標に掲げています。
⚫ また、定性的には、シングルナノの先端ロジック半導体については、世界的にみて、その供給の6割が台湾に依存しており、特に最先端領域では実に9割が台湾で生産されているとされます。地政学的情勢も踏まえると、その生産拠点を我が国が有することは、日本の経済安全保障にとって大きな意味を有するのみならず、同志国・地域にとっても有益であると考えています。
⚫ 経済への波及効果については、外部の試算となりますが、2023年11月、一般社団法人 北海道新産業創造機構より Rapidus 立地に伴う北海道経済への波及効果シミュレーションの結果が公表されており、関連産業の集積やインフラ整備、雇用の創出等により 2023 年度からの 14 年間の累積で最大18.8 兆円の経済波及効果が見込まれるとの試算が
なされています。
⚫ なお、ご指摘のとおり、ラピダスが取り組む2nm世代の半導体は世界でいまだ誰もなしえておらず、波及効果の試算結果については多くの仮定のもとに成り立っており、引き続き注視する必要があると考えています。
④諸外国でもアメリカ等半導体に関する支援をしている国があると承知していますが、それらの国の技術力及び市場におけるシェアがどの程度になるか、見込まれていますか。見込まれていればその詳細を教えてください。
<答>
⚫ ご指摘のようにアメリカや欧州各国でも半導体に関する支援策が行われており、先端ロジック半導体やアナログ半導体、設計ツール等が支援の対象となっています。
⚫ シェアに関しては、アメリカの CHIPS 法では先端半導体のグローバルシェアを20%、欧州CHIPS法でも次世代半導体の域内生産のグローバルシェア20%以上(現在 10%)とすることを目標に掲げていると承知しています。
⑤④を想定した上で、世界の半導体市場における、日本の技術力及び市場シェアの目標はありますか。
<答>
⚫ ②で回答したとおり、我が国では、国内で半導体を生産する企業の売上高を2030年に15兆円、先端ロジック半導体においては 1.5 兆円とすることを目標に掲げています。
⚫ 日本の技術力につきましては、半導体製造装置や部素材、パワー半導体などの従来型半導体では、グローバルサプライチェーンの中でも日本が一定の強みを有する分野と考えています。
⚫ 一方で、半導体の設計技術や次世代半導体の製造には不可欠な EUV 露光装置などは日本が弱い、もしくは製品レベルの技術を保有していない状況となっています。
⚫ 強みを有する分野については、引き続き技術動向を注視しながら必要な開発支援等を継続するとともに、弱い分野については、有志国・地域の有力な企業・機関と国際連携を行うなどの形で補強を行うことで、我が国半導体産業の復活に向けた取組を進めていきたいと考えています。
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さらに追加質問しました。
↓↓↓
①前回の問③への回答について、支援がないとどうなる想定で、支援をするとどのように変化するのか、その差異が成果指標になると思いますので支援しない場合の想定と支援後の想定にどの程度の効果があるのかについて、もう少し詳しく教えて頂けますでしょうか。
<答>
⚫ 頂戴したご意見につきましては、今後の検討の参考とさせていただきます。
②前回の問④について、市場規模やその変化についての想定数値はないのでしょうか。
<答>
⚫ 前回の問4では、諸外国における半導体支援における技術力、市場シェア見込みについてご質問をいただき、市場シェア見込みに関しては、米国CHIPS法では先端半導体のグローバルシェア20%、欧州 CHIPS 法では次世代半導体の域内生産のグローバルシェア 20%以上を掲げていることを回答いたしました。
⚫ その上で、彼らがそのような市場シェアの見込みを出した根拠については承知しておりません。
※補足/シェアではなく規模を質問したのですが、規模に関する回答はありませんでした。
③前回の問⑤について、日本では市場シェア目標はありませんか。金額目標があるなら、市場シェアも出るのではないかと思いますので教えて頂けますでしょうか。
<答>
⚫ 市場シェア目標は設定しておりません。
④③について、支援をしなかった場合の想定と、支援をすることでどう変化するのかについてをそれぞれ教えてください。
<答>
⚫ ラピダスへの支援がなくなった場合、国内で最先端ロジック半導体に取り組む企業が不在となり、前回問5で回答いたしました売上目標は部分的にしか達成できないこととなります。
つまり、、、
✓ラピダス社への支援を行った場合と行ってない場合の差異については考えてさえいなかった
✓目標もKPIもあるが、進捗は教えられない
✓日本の半導体における市場シェア目標はない
こんな感じでしょうか。
個人的には、、支援があるときとない時で比較していない時点で、妥当性の判断が適正だったか大きく疑問が残ります。
皆様もご意見があれば是非お願いいたします。