村上ゆかりの日記 (浜田聡参議院議員秘書)

浜田聡参議院議員公設秘書。事務所のお仕事で調査した資料などをご紹介。

【調査資料】日銀の政策会合決定等が事前に報道機関に漏洩されているのではないかという疑惑について(続き)

suenagayukari.hatenablog.com

 

上記ブログの続きです。

浜田聡事務所より依頼して頂いた国会図書館の調査資料をご紹介します。

 

【依頼内容】

日本銀行金融政策決定会合の討議内容が事前に報道機関に漏洩している可能性があることについて、質問主意書で以前取り上げているように、日本銀行金融政策決定会合の討議内容が事前に報道機関に漏洩している可能性があることは、現在も様々に指摘されている。仮に報道機関への漏洩が事実である場合に、それによってどのような悪影響や悪用が考えられるかを指摘した資料。 

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/201/syuh/s201154.htm

 

【回答】

○ 翁邦雄氏(大妻女子大学特任教授、元日本銀行職員)は、日本銀行金融政策決定会合の事前的情報発信について、以下の説明をしています。

▼資料1/翁邦雄『金融政策のフロンティア―国際的潮流と非伝統的政策―』日本評論社, 2013, pp.25-30.

※紙資料の為引用元資料そのものは割愛 
金融政策決定会合の事前的情報発信について、政策委員の間では、いわゆるブラックアウト・ルール―各金融政策決定会合の 2 営業日前(会合が 2 営業日以上にわたる場合には会合開始日の 2 営業日前)から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間は、国会において発言する場合等を除き、金融政策および金融経済情勢に関し、外部に対して発言しないこと―が申し合わされている。これは、市場が決定会合の結果に予断を持つことを回避するためである。」


○ マイナス金利政策の導入を決定した、2016 年 1 月の金融政策決定会合の開催中に、一部報道機関において同会合の議論の内容とされる情報が報道された件に関して、日本銀行は、情報漏洩が疑われる事実は発見されなかったとする調査結果を公表しました。この公表文では、「金融政策決定会合の結果が公表される直前に、これに関する報道が行われた場合には、金融市場に撹乱的な影響が及ぶなど、極めて好ましくない事態にもつながりかねません。」と言及されています。

▼資料2/

日本銀行金融政策決定会合に関する一部報道を受けた調査結果と情報管理強化につ
いて」2016.2.24. 

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/m_ref/rel160224c.pdf

なお、日本銀行へ浜田聡事務所より直接確認したところ、上記↑調査は日本銀行の自主的な調査だったとの事です。(当時のマイナス金利導入に関する情報が漏えいしたことが問題視されたことを受けたもの)

▼参考

jp.reuters.com

 

○ 2023 年 10 月の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化(長期金利の上限について 1.0%を目途とし、これを超えることを許容)が決定された際には、直前に「1%超えを容認する」とのリーク報道が出たことで、金融市場では「1.5%程度まで上限が引き上げられる」(FX 業者)との観測が台頭し、円相場は一時、148 円台まで買い戻されました。しかし、従来とほとんど変わらない修正内容であったことを受けて、一転して円相場は 151 円台後半まで売り込まれるという状況が発生したと報じられています。

▼資料3/窪園博俊「〔日銀〕市場圧力に屈し政策再修正 マイナス金利解除も前倒しか」『週刊エコノミスト』4815 号, 2023.11.28, p.92. 

※紙資料の為ここでは割愛

 

金融政策決定会合の事前的情報発信がもたらす悪影響について、有識者が指摘しているものとしては、以下が挙げられます。

▼資料4/田中秀臣日本銀行の「リーク」体質を利用する悪い「市場関係者」たち」
Newsweek』2016.9.15.

https://www.newsweekjapan.jp/tanaka/2016/09/post-5_2.php

▼資料5/ リーディー・ガロウド、ダニエル・モス「【コラム】日銀決定の直前報道、情報漏れ対策を」『Bloomberg』2023.11.2.

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-11-02/S3H21UT0G1KW01

 

○ なお、唐鎌大輔氏(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)は、「巷説で指摘される通り、植田体制発足後、観測報道は明らかに多くなっている。市場参加者における会話でも「事前のリーク待ち」というフレーズが当たり前のように使われるようになっており、それが植田流の政策運営という解釈が浸透しているようにも思える」と述べています。

▼資料6/唐鎌大輔「なけなしの「日銀発」円高材料はリークで尽きた」『東洋経済 ONLINE』2024.3.18.

https://toyokeizai.net/articles/-/741920