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そもそも卒対費を含み、私費についてのガイドラインはないのか探してみたところ、岐阜県教育委員会が出している、「公費私費負担区分等ガイドライン」がありました。
PRHOCPR096-20160328101201 (gifu.lg.jp)
義務教育(小学校・中学校)とは直接関係ありませんが、参考にできると思い、東京都も調べてみました。
東京都にもありました。
まず、卒業記念品についての通知がありました。相談者が見つけてくださいました。
※一部抜粋※
卒業記念品の受領については、ややもすれば旧来の慣習に流れ、母校の設備・備品の不足を補うということになりがちである。このことは、公立学校の運営費はすべて公費によるべきであることの私費負担解消の原則からみて好ましくないので卒業生の気持を感謝しつつもその自粛を呼びかけてきたところである。
しかしながら、未だその徹底を欠く学校も見受けられるので、今後下記により周知徹底されたい。なお、学校運営費の私費負担解消については、公費予算の増額を図らなければならないのはもちろんであるが、各学校においても安易に私費に依存することなく、公費による学校運営費のなかで創意工夫をこらすとともに、PTAに対しても趣旨を十分説明し、その協力を得ることも必要不可欠なことでもあるので、今後引続きなお一層の努力をされたい。
この「私費負担解消の原則」について調べたところ、東京都教育委員会が、昭和42年3月に私費負担解消に係る通知を出していました。
この通知は「私費負担解消の宣言とも言うべき」通知と言われているそうです。
通知はURLをご参照ください。
またこの通知は、東京都教育委員会から、区市町村長、区市町村教育委員会教育長、
区立小中学校校長、区立小中学校PTA会長にそれぞれ出されているようです。
通知の背景としては、東京都の動きとして、昭和38年7月、学校運営費の私費負担が増大し、負担解消を求める都民の声の高まりを受け、都議会において、
「公立小中学校における私費負担の抑制措置に関する決議」がなされたこと等があったようです。
また、同じ頃、国の動きとして、昭和35年に地方財政法改正によりPTAによる学校の教職員給与や施設・設備整備のための「半強制的な寄付行為」の禁止等の動きもあり、
同通知は、「義務教育学校運営費標準」を作成したこと及びこれを活用し私費負担の解消を図るべきこと等について周知を行ったようです。
「運営費標準」は、一般的な学校が行っている教育の実態を基礎として、経費を算定し作成されたもので、この「運営費標準」に基づいて、区市町村に財政措置がなされたようです。
また、私費負担の軽減を図るべく、公費・私費の負担を明確にすることを目的に作られ、私費に依存することがやむを得ないもの(※)以外はすべて公費負担とされました。
(※)
1.通常、家庭にある品物あるいは家庭になくても、家庭教育上必要な品物で学校における学習指導上必要な場合は、個人の所有物として学校に持参し得るもの(ノート、鉛筆、そろばん、ハーモニカ等)
2.家庭にない品物等で家庭教育上特に必要というわけではないが、そのもの、又は、その利益が直接個人に還元されるもの(工作材料セット代、給食費、修学旅行費等)
なお、東京都教育委員会『東京都の教育 令和3年度版』によると、
平成12年の地方分権一括法施行により、教育行政は区市町村が主体的に行うものとなったことから、東京都教育委員会が区市町村学校の運営費の標準を示すことは必ずしも適切ではなくなったこと等を理由に、各区市町村教育委員会が、自主性・自立性を尊重した運営費標準を設定することが望まれるととされております。
(参考)
大塚玲子「残念な常識「学校はPTAのお金に頼っている」に、東京の人だけが驚く理由」『Yahoo!JAPAN ニュース』(2017.11.16)
https://news.yahoo.co.jp/byline/otsukareiko/20171116-00078183
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◆その他、東京都教育委員会が出した卒対費に関連する通知
・「義務教育学校運営費標準の設定と公費で負担すべき経費の私費負担解消について」昭和42年3月13日 42教総庶発第149号
二 (三) 諸行事の取扱いについて
「入学式、卒業式及び周年記念式については、標準により公費をもつて措置することとしたが、学校における諸行事に伴う謝恩会、祝賀会は、教育の場であることを認識し、慎重に配慮すること。」
との記述があります。
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/static/reiki_int/reiki_honbun/g170RG00002424.html
(ページの中ほどに該当箇所あり)
・「私費運用の考え方について 」昭和44年2月22日 44教学学発第85号の1
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/static/reiki_int/reiki_honbun/g170RG00002411.html
◆文部科学省が出した卒対費に関連する通知
・「学校関係団体が実施する事業に係る兼職兼業等の取扱い及び 学校における会計処理の適正化についての留意事項等につい て(通知)」
平成24年5月9日 24文科初第187号
2.学校における会計処理の適正化に係る留意事項
「② 学校関係団体から学校に対して行われる寄附について、地方公共団体が住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収することは、地方財政法第4条の5の規定により禁止されていること。」との記述がありました。
https://www.env01.net/fromadmin/contents/2015/ptamonbukagakutuuti.pdf
(参考)大塚玲子「その寄付、実は「強制徴収」かも 学校がPTAからの寄付を受けてはいけない理由」『Yahoo!JAPAN ニュース』(2019.11.20)
https://news.yahoo.co.jp/byline/otsukareiko/20191120-00150586
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末永の意見
卒対費が高いと相談者が感じた理由は、大きく以下の二点ではないかと思います。
・事前説明が無かった(何にいくら使うのか、何故使うのか等)
・毎年徴収しているのだから徴収するのが当たり前とされることへの違和感
お金への不信感は、コミュニティの信頼を大きく下げる要因になります。これはどの場合でも言える事だと思います。強制徴収される税金だって納得して支払いたいものです。
PTA等の任意団体が関連することは特に、お互いに気持ちよく過ごすために、特にお金まわりのことは納得できるように透明性の確保や事前の説明責任を果たせるような仕組みを作るべきだと感じました。
また、「最小の経費で最大の効果」を得られるために、参加者がよく話し合う事も重要だと思います。本当に必要なのか、何が最適なのかはその時々によっても違うものだと思います。
アカウンタビリティという言葉も最近よく聞きますが、≒説明責任はどの場面においても重要だと思います。
タイトルに戻ると、卒対費は任意です。しかし、実態は強制で徴収されたと感じる方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、前年と同じだからと当たり前のように決まった金額を徴収するという仕組みはお互いに大事な信頼関係を崩しかねないと思います。
本ブログをお読みになった方で、卒対費についてもし納得できないことがあれば、主体となる学校やお住いの自治体の教育委員会と話し合うか、地方議員などへ相談されてみてはいかがでしょうか。