村上ゆかりの日記 (浜田聡参議院議員秘書)

浜田聡参議院議員公設秘書。事務所のお仕事で調査した資料などをご紹介。

【調査資料】トヨタの認証不正問題について 1100㎏の後面衝突試験を1800㎏で行った問題、何が正しいのか

suenagayukari.hatenablog.com

 

上記ブログの続きです。

国会図書館へ、浜田聡事務所より下記調査依頼を出しました。

【依頼内容】
国連の車両等の相互承認協定(1958 年協定)について、後面衝突試験の台車重量が 1100 ㎏±20 となっている根拠
1 何故、上限が設けられているのか(上限を超える試験は認証試験の基準をクリアしたことにならないのか)
2 1100kg±20 の数字の根拠と、この数字の見直しはされているか
3 認証基準そのものの問題を指摘した資料(トヨタの認証不正問題を除く)

 

【回答】

▼ 何故、上限が設けられているのか
(上限を超える試験は認証試験の基準をクリアしたことにならないのか)
今回の調査では、国連欧州経済委員会(ECE)が定める「車両等の型式認定相互承認
協定」(※1/1958 年の国連欧州経済委員会車両協定)に関して、移動台車の上限が設けられた経緯は分かりませんでした。しかし、一般論として、より重い移動台車で試験を行ったとしても、安全性が高まるものではないとされます。重い移動台車に耐えられるよう車体を頑丈にすれば、衝突時に後部が潰れず、相手の車に大きなダメージを与える危険性があるほか(資料 1)、ブレーキや燃費の性能に影響を与える可能性もあるとされます(資料 2)。
例えば、アメリカでは、FMVSS No.301 において、後面衝突試験の手順が規定されて
おり、2003 年 12 月に改定されています。改定前は、時速 48km で対象車両の後部全幅
に 1,814kg(4,000 ポンド)※2の移動台車を衝突させる手順でしたが、改定後は、時速 80kmで対象車両の後部にオーバーラップ率 70%で 1,368kg(3,015 ポンド)※3の移動台車を衝突させる手順になりました※4アメリ運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、より重い移動台車を採用しなかった理由については、次のようにまとめられます(資料 3, pp.67071, 67073, 67077.)。

また、後面衝突試験では、移動台車の重量のみならず、衝突の速度や車両と移動台車
のラップ率についても基準が定められています。上記のとおり、アメリカの規定では、
時速 80km でラップ率 70%ですが、例えば、日本や ECE の規定では、時速 50km でラッ
プ率 100%(移動台車 1,100kg)となっています(資料 4, p.198.)。 

 

※1/1958 年の国連欧州経済委員会車両協定について

 正式名称は、「車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定」です。国土交通省では、「車両等の型式認定相互承認協定」、外務省では、「1958 年の国連欧州経済委員会車両協定」と略されています。「国連の車両等の相互承認協定(1958 年協定)の概要」国土交通省ウェブサイト

https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090403_3/04.pdf

「一九五八年の国連欧州経済委員会車両協定」外務省ウェブサイト

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/B-H10-0137.pdf

以下では、国土交通省に倣い、「車両等の型式認定相互承認協定」を採用しています。 

※2/今回は、1 ポンド=0.453592kg として算出しています。端数処理によるものとみられますが、1,800kg としている資料もあります。 

※3/ 端数処理によるものとみられますが、1,360kg や 1,361kg としている資料もあります。 

※4/2006 年 9 月 1 日以降に製造された車両には、改定後の規定が適用されます(CFR Title 49, §571.301 Standard No.301 Fuel system integrity, S7.3(b), §587.6(c).)。

 

▼1100kg±20 の数字の根拠と、この数字の見直しはされているのか
「車両等の型式認定相互承認協定」については、付属書の一つとして、「車両火災の
防止に係る協定規則(第 34 号)」が 1975 年 7 月 1 日に一部の国で発効しています。同協定規則においては、1975 年の初発効の時点で、後面衝突試験で使われる移動台車と緩衝部材の重量の総計が、1,100±20kg と規定されています(資料 5, pp.270, 278.)。
今回の調査では、この重量に関する根拠は見当たりませんでしたが、この数字は、同
協定規則における現行のものと同じであり、今回調査した限り、この数字が過去に見直
されたことが分かる資料は確認できませんでした。


▼ 認証基準そのものの問題を指摘した資料(トヨタの認証不正問題を除く)
トヨタの認証不正問題を除くと、該当する資料は多くありませんでしたが、後面衝突
試験については、移動台車が均一な荷重特性であるため、実際の車両の特性を十分に再
現できていないと言われています。そのため、世界各国の自動車メーカーや研究機関で
は、実際の状況に近い車対車の衝突条件で安全性能を評価するための研究を重ねている
とされます。実際の車両の不均一な荷重特性を忠実に再現した移動台車も開発されてお
り、日米欧では現在、より適切な試験方法、評価指標の確立と国際基準調和を目指して
活発な議論が行われているとされます(資料 4, pp.198-200.)。
なお、トヨタの認証不正問題にも言及していますが、1,100kg という基準が実態に合
っていないと主張する資料がありましたので、御参考までに御提供いたします。これに
よれば、電気自動車は従来の自動車よりも重いため、電気自動車が普及している現状に
鑑みれば、1,800kg の方が現実的な数字であるとされます(資料 6)。

 

▼提供資料

資料1. 「型式認証 トヨタ「厳しい条件で試験」」『毎日新聞』2024.7.27.

   ⇒紙資料の為ここでは割愛します。

資料2. 角詠之 トヨタ会長の「北米基準の1800キロ」で試験 基準は06年に廃止:朝日新聞デジタル 2024.7.31.

資料3. Federal Register, vol.68, no.239, 2003.12.1, pp.67068-67086.

https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2003-12-01/pdf/03-29805.pdf

資料4. 公益社団法人自動車技術会「第 7 章 衝突安全試験」『自動車技術ハンドブッ
ク 試験・評価(車両)編<第 9 分冊>』2016, pp.198-200.

   ⇒紙資料の為ここでは割愛します。
資料5. United Nations, Treaty Series, vol.973, 1975, pp.270, 277-278.

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/88/UN_Treaty_Series_-_vol_973.pdf

資料6. 冷泉彰彦「重たい EV 時代にはそぐわない日本の 1100 キロ基準」『Newsweek
2024.6.26. Yahoo Japan ウェブサイト

重たいEV時代にはそぐわない日本の1100キロ基準(ニューズウィーク日本版) - Yahoo!ニュース

 

資料6を一部下記に抜粋します。

世界中で2トン前後のEVがかなりの勢いで増えているわけです。ということは、どう考えてもガソリン車を含む自動車の型式認定の際には、1100キロの台車を衝突させた実験ではなく、1800キロの方が現実的と言えます。もしかしたら、1800キロでも軽すぎるかもしれません。 後方衝突試験、つまり追突されても燃料漏れなどの重大な事故にならないような強度を確保する試験の場合、確かにEV時代の前であれば1100キロという数字にも妥当性があったかもしれません。ですが、今は、1800キロから2000キロというのは必要ではないかと思うのです。普通のサイズのセダンタイプのテスラが、後方から追突してきたら、簡単に車両の後部が壊れてしまい、燃料漏れなど重大な問題を起こすのであれば、それはやはり問題だからです。 」

「もちろん、日本の場合は軽四輪があるなど、特殊事情もあると思います。ですが、軽四だからテスラに追突されて潰れたり炎上したとしても仕方がないとは絶対に言えないと思います。とにかく、この問題に関しては、国交省も1100キロにこだわることなく、EV時代にふさわしい後方衝突試験の基準をメーカーなどと一緒に考えていって欲しいと思うのです。」

 

1800㎏でやったほうが安全だと一概に言えない事は前回のブログも含めた調査資料でよく分かりましたが、一方で、EV車が増えた昨今、1100㎏では軽すぎるのではないかという指摘もあるようです。

上記資料6に記載のある部分(抜粋した箇所)については、浜田聡事務所より国交省の見解を質問しました。回答が来ましたら共有します。

 

【質問内容】

https://news.yahoo.co.jp/articles/bccbfd11f1150aa63f5fd79fd600414e1077f86f

①いわゆる、トヨタの認証試験の不正問題に関連して、後方衝突試験について上記記事にあります、下記記載について国交省の見解を伺いたいです。

 

世界中で2トン前後のEVがかなりの勢いで増えているわけです。ということは、どう考えてもガソリン車を含む自動車の型式認定の際には、

1100キロの台車を衝突させた実験ではなく、1800キロの方が現実的と言えます。もしかしたら、1800キロでも軽すぎるかもしれません。

後方衝突試験、つまり追突されても燃料漏れなどの重大な事故にならないような強度を確保する試験の場合、

確かにEV時代の前であれば1100キロという数字にも妥当性があったかもしれません。

ですが、今は、1800キロから2000キロというのは必要ではないかと思うのです。普通のサイズのセダンタイプのテスラが、後方から追突してきたら、

簡単に車両の後部が壊れてしまい、燃料漏れなど重大な問題を起こすのであれば、それはやはり問題だからです。 」

「もちろん、日本の場合は軽四輪があるなど、特殊事情もあると思います。ですが、軽四だからテスラに追突されて潰れたり炎上したとしても仕方がないとは絶対に言えないと思います。とにかく、この問題に関しては、国交省も1100キロにこだわることなく、EV時代にふさわしい後方衝突試験の基準をメーカーなどと一緒に考えていって欲しいと思うのです。」

 

②このような衝突試験の基準について、これまで基準値の見直しを行ったことはありますか。もし見直しに際して、国内の車の重さなどを調査されていればその調査資料が欲しいです。

③協定(車両相互承認協定)の内容そのものは見直しがなされてきているのでしょうか。把握している範囲で教えて頂きたいです。

https://unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29regs/2015/R034r3e.pdf

(2015年の見直しが最新でしょうか?)

下記フォーラムで(数値の)見直しはされているのでしょうか?

https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000307.html