末永ゆかりの日記 (浜田聡参議院議員秘書)

浜田聡参議院議員公設秘書。

【調査資料】宗教法人が解散請求により解散した場合の影響範囲とは?

浜田事務所宛に下記投稿を頂きました。

 

これを受けて、浜田聡事務所より参議院調査室へ下記調査依頼をしました。

【依頼内容】

宗教法人が解散請求により解散した場合の影響範囲についてご調査お願いしたいです。

①解散した場合清算する流れになると思いますが、清算時に、任意団体として宗教活動を継続する場合において、全ての財産を処分する以外の措置などの対応は可能か(↑投稿のように一度全て処分しなければならなくなるのでしょうか。)

→関係法令や逐条解説と併せて知りたいです。

②①により団体が受ける影響範囲(宗教活動にどの程度支障があるのか等)

 ∟オウム真理教の時の資料など過去資料を可能な範囲で教えて頂きたいです。

 

調査結果について、可能な範囲でご紹介します。

 

【回答】

(1)解散した場合清算する流れになると思いますが、清算時に、任意団体として

宗教活動を継続する場合において、全ての財産を処分する以外の措置などの対応は可能か(投稿のように一度全て処分しなければならなくなるのでしょうか。)

 

 宗教法人が解散する場合としては、①宗教法人自身の意思で解散する「任意解散」(第43条第1項)と、②宗教法人法に規定される一定の事由に該当した場合の「法定解散」(第43条第2項)の2つがあります。

このうち、政府が昨年10月に旧統一教会に対し解散命令請求を行っているところ、裁判所から解散命令が出され、判決が確定した場合には「法定解散」となります(同条同項第5号)。

 この宗教法人が解散するということは、その宗教法人の目的である宗教活動を停止して、財産関係の整理段階に入ることを意味します。また、その解散による財産関係の整理事務のことを「清算」と言います。

具体的には、清算人(第49条)が置かれ、その清算人が、宗教法人が貸しているお

金など債権を取り立てたり、宗教法人が借りているお金など債務を返済することに

なります(第49条の2)。

なお、解散命令に基づく「法定解散」の場合、清算人の人選は、裁判所が、所轄庁

、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することとさ

れています(第49条第3項)。

 

 清算人が解散した宗教法人の債権の取立て、債務の弁済等を行った後、最後に残

った「残余財産」があれば、その取り扱い(第50条)は、次の3つのいずれかの対

応となります。

①宗教法人の規則に、「残余財産」の規定があれば、その規定に従う

②規則に規定がなければ、他の宗教団体又は公益事業のために処分することができる

③①、②のいずれでも処分されなかった場合は国庫に帰属する

ということになります。

 このため、「残余財産」ではありますが、上記①、②のいずれかに該当すれば、

解散後の後継の宗教団体に、「残余財産」を引き継ぐことは可能と考えられます。

 

▼関係法令

宗教法人法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000126

第四十三条 宗教法人は、任意に解散することができる。
 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
 規則で定める解散事由の発生
 合併(合併後存続する宗教法人における当該合併を除く。)
 破産手続開始の決定
 第八十条第一項の規定による所轄庁の認証の取消し
 第八十一条第一項の規定による裁判所の解散命令
清算人)
第四十九条 宗教法人が解散(合併及び破産手続開始の決定による解散を除く。)したときは、規則に別段の定めがある場合及び解散に際し代表役員又はその代務者以外の者を清算人に選任した場合を除くほか、代表役員又はその代務者が清算人となる。
 前項の規定により清算人となる者がないとき、又は清算人が欠けたため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任することができる。
 宗教法人が第四十三条第二項第四号又は第五号に掲げる事由によつて解散したときは、裁判所は、前二項の規定にかかわらず、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任する。
(残余財産の処分)
第五十条 解散した宗教法人の残余財産の処分は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、規則で定めるところによる。
 前項の場合において、規則にその定がないときは、他の宗教団体又は公益事業のためにその財産を処分することができる。
 前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。

 

(2)(1)により団体が受ける影響範囲(宗教活動にどの程度支障があるのか等)について

オウム真理教の場合は、

東京地方検察庁及び東京都が東京地方裁判所に対して請求した解散命令が確定

して宗教法人としての法人格を失い(平成7年12月19日確定)、

・事件の被害者、遺族及び国が東京地方裁判所に対して申し立てた破産宣告の決定が確定し(平成8年5月10日)、財産の差押えを受ける等となったとのことです。

https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten260/it3.htm警察庁ウェブサイト)

このため、上記(1)の清算手続ではなく、破産宣告を受けて、破産手続が開始され(第43条第2項第3号、第48条)、破産法の規定に従ったことになっております。

 

▼関係法令

宗教法人法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000126

(解散の事由)
第四十三条 宗教法人は、任意に解散することができる。
 宗教法人は、前項の場合のほか、次に掲げる事由によつて解散する。
 破産手続開始の決定
(破産手続の開始)
第四十八条 宗教法人がその債務につきその財産をもつて完済することができなくなつた場合には、裁判所は、代表役員若しくはその代務者若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。
 前項に規定する場合には、代表役員又はその代務者は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

破産法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000075

 

(参考)宗教法人が解散した後の宗教団体の財産等の扱いについて、参考となる論文

・櫻井圀郎(2012)「宗教法人解散後の宗教活動」『キリストと世界』(第22号)(参考となるページ P.133)

 

著作権の都合で論文の公開はできませんが、ポイントとして書かれている点を要約すると、下記のとおりでした。

・世俗面である礼拝施設を含む財産については、一切、その権利を喪失する

・財産によって縛られない宗教活動は法人が解散しても影響はない

・宗教法人の解散後、存続する宗教団体は解散によって有していた一切の財産を失う事になる=財産的にはゼロからの再出発

・解散後に得た新たな献金などは当然に当該宗教団体へ帰属される

※注意 末永が読んでポイントと思った点を抜粋しているため、元の記述と異なる点がある事をご承知おきください。

 

オウム真理教の場合は破産であるため世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の場合と異なるようですが、それでも軽微な影響とは言えないと思います。